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胃カメラ体験記
食欲不振が続いていたので、胃カメラをすることにした。事前の血液検査でCRPの値が0,04だったので、炎症的なものはないということはわかっていた。ストレス性の食欲不振であることもわかっていた。しかし10年前に検査を受けて以来ずっと胃カメラをしていなかったので、60歳を前にこの...
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カエルの森
野球場から射撃場跡地の横の道を北に五百歩ほど。はじめて出会った道を左へ鋭く切れ込むように折れると、その道は競走馬の育成牧場へと続いている。牧場までは行かずに再び左へ、牧場のブロック塀と雑草地にはさまれた道をとる。 雑草地を囲む有刺鉄線には、必ずトンボが二~三匹とまっているは...
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カブトムシをつかまえにいく
食べ残しのスイカと、腐りかけたメロンと、黒蜜を入れたビニール袋を手に、夜、小さな森の中に入る。最後の街灯の光が力尽きると、もう懐中電灯のか細い明かりしかない。 父親を先頭に、子どもは明かりを振り回しながら細道を登っていく。夜の森ほど、黒が黒である場所はない。空気の粒子までね...
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打ち上げ花火を見る
いつもはほとんど人通りのない道。人々は同じ方向に向かって、ぞろぞろと歩いていった。急ぐでもなく、はしゃぐでもなく、真っ暗な道を延々と。 家と家、マンションとマンションの隙間を、欠けた花火が一瞬いないいないばあのように顔を出す。そのたびに「ああ」という感嘆の声。...
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プールサイドにて
そのとき、私はプールから五メートルほど離れたところにある緑色のパラソルの下の、やけに軽いつくりの折りたたみ椅子に足を組んで座りながら、水の中の子どもたちの方を、サングラスをかけた目でながめていた。 潜水を覚えた子どもたちは、もぐっては飛び出し、もぐっては飛び出しを繰り返し、...
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梅雨Ⅰ
風邪が治ってやっと歩く気になった。歩くとはしかしなんと散文的な時間の使い方なのだろう。語彙力のまるで無い子どものために(自分のために)、漢字の問題集でも買ってこなくてはと思いながら、駅の向こうの書店まで曇天の下を歩いている。...
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ヒナを拾う
うかつにもムクドリの夫婦は、庭の柘植の木に巣を作ってしまった。このあたりには猫が 三匹もうろついているというのに。生まれてくるであろうヒナのために、やわらかそうな茶色の小枝を重ね重ねて、いかにもやさしい巣を作り、その中にぽろりぽろりと三つの卵を産んでしまった。柘植の葉っぱの...
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ヒナの死
三羽のヒナのうち二羽はすぐに死んでしまった。残った一羽はぐったり横たわったまま、かろうじてあえぐような呼吸を続けていた。少年はそっとてのひらにヒナを乗せる。赤黒く素裸で、首の根もぐらぐらと危うい。少しひんやりとしている。まだ親鳥にあたためられていなくてはならない生まれたての...
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先生の油絵
高校の時の美術の男性教師、K先生は、いつも美術室の隣にある美術準備室にこもっていて、授業でさえめったに顔を見せなかった。四十代ぐらいで、背も高い方とは言えず、自信なさそうな気弱な笑みを浮かべて、生徒たちとまともに視線が合うのを恐れているような人だった。...
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成人式のお寿司
今年の成人式の日は一日中大雪になった。高価な着物を準備して待ち望んでいた人たちには気の毒なことだった。 私自身の成人式は、ちょうど大学の後期試験の真っ最中だったので、実家に帰りもせずに試験勉強をしていた。鳥取から上京してきていた友人も帰らなかったので、二夕方高田馬場駅で待ち...
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