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鏑木詩集(3)                        鏑木恵子

 

日記のように詩を書いてきました。中期の作品です。

 

繰り返す

 

 

この雲の形も色も

あるいは以前どこかで

見たことがあったかもしれない

 

今あなたと話をしたその会話も

いつかの話と同じだったような

 

今まで笑ってきたその同じものに対して

これからも笑うのだろうし

今まで悲しんできたその同じものに対して

これからも悲しみ続けるのだろう

 

どんなに訓練しても平静ではいられない

そんな場面にもこれから何度も出会うだろう

 

あなたは小さな赤ちゃんを胸に抱いて

「かわいい」とほほえむ

わたしも同じものを見て

同じように「かわいい」とほほえむだろう

 

どう生きてきたかなどとは関係なしに

感情は人々の中で繰り返されていく

 

あなたの赤ちゃんもいつかは

暮れていく空に痛みを感じるだろう

哀れで滑稽な人間の感情

 

繰り返す

繰り返す

生まれては死に 死んでは生まれ

涙も笑いも恐れも憎しみも

 

魂が記憶している

赤ちゃんがおっぱいを探そうとして

顔を押し付けてくるとき

尖った熱さで胸に満ちてくるもの

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