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鏑木詩集(2)            鏑木恵子

  日記のように詩を書いてきました。初期の作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海くんの肩もみ」は、2002年に、NPO法人ままとんきっずから出版した詩集。10年くらいにわたって「ままとん通信」に掲載してきた作品をまとめたものです。右の[Recent  Posts]より、お入りください。

 

 「メニュー」に「海くんの肩もみ」に寄せてくれた感想のお手紙などをつけ加えました。    

 

 

 

今日

 

 

言いたいことはすべて言い尽くしたように思った

黙っていれば代わりに誰かがしゃべってくれる

水車のように回転して

時間は粉々にすりつぶされていく

誰かの口から光合成の泡があふれる

 

たとえ明日が

予言によって既に破滅していたとしても

今日は約束の仕事を果たすために

私は動き続けるだろう

生きることの価値を

ささやかな金銭に代えるために

 

からっぽになった両手に

溢れる水を受け

水の去り方の見事さを学ぶ

まず念入りな朝の身づくろいから

さっぱりとした今日を始め

その心地よさで

今日を満たしていこう

 

生体の反応が

感情を決定していく

当たり前の思いを正当に浮かべ

語りたくない口は閉ざして

卑屈な笑いを切り捨てていく

 

駆け降りる地下道

張り巡らされたタイルのトンネルに

響き渡る幾百もの足音

快が不快になるぎりぎりのところを

危うくかすめていく

心が囲い込む空間の外へと

 

そのままのスピードで

約束の地図を描き替えにいこう

昨日 白く乾いていた土地に

今日 人々は都市を作りはじめる

明日 骨組みから廃墟が透けて見えようとも

求められたすべてを果たしにいく

降りた階段の数は数えない

もっとはみ出した今日を描くために

 

 

 

 

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