読了時間: 9分
海くんの肩もみ(3) (出版詩集)
十月の誕生日に 夏から飼っていたカブトムシが死んでしまった (たぶん寿命で) おなかが大きいカマキリは いつまで待っても卵を産まない (ケースの底には食いあさったバッタの死骸が) かわいがっていた茶トラの野良猫は 車にはねられて悲しい死に方をした...
閲覧数:38回
読了時間: 11分
海くんの肩もみ(2) (出版詩集)
場面 子どもを産むとき その痛みの中で 次の瞬間にも場面が変わって 胸に赤ちゃんを抱いている姿になっていればいいのにと思った けれど場面は一コマも落ちなかった 死ぬ時もきっとそうだろう はやくさっぱりと乾いた 天界の朝に飛び移りたいと願っていても 心電図の波形が尽きるまでは...
閲覧数:20回
読了時間: 10分
海くんの肩もみ(1) (出版詩集)
やがては ひこうきの音が空に聞こえれば 空を見上げ ひこうきが空を過ぎれば 飛びゆく先を指さして 「あれは?」と声をあげる かぜが吹き かぜに向かって走り出し 花がゆれれば そのもとにしゃがみこみ ちょうが舞い ありが歩き 猫がねころび 植木鉢の下の だんごむし...
閲覧数:15回
読了時間: 5分
第7詩集 ケン玉の情熱(2)
朝の領域 ああ・・・と思うような 遠回りをして 結局それでよかったのだと 振り返る よく拭われた朝 霜を乗せたナイフ 清浄は虚無に近い そして私は 何を選んだのだろう 消毒した手を 汚すことなく 朝の光は 思う以上に白く 浅い角度をつけて この部屋に入り込む まだ...
閲覧数:26回
読了時間: 10分
第7詩集 ケン玉の情熱
流れる 揺れている振り子の落ち着き すべりゆく星の熱情 まわりまわる水流の悲しみ 砕け散った宝石の晴れやかさ 私はそのすべてであり 一部分であり 届こうとする力の矢印に従って 瞬間ごとに表情を変え 絶えず流れていくものである...
閲覧数:23回
読了時間: 8分
第6詩集 たたずむ子ども(2)
猫はほめてくれない その個体は眉をしかめた それが心の形だった 一本指でキーを打つ 夕暮れに感応して 道を照らしだす明かり 金魚はあっちを向いてばかり ねじれながら方位は揺れる 踏み誤った突飛な一言 猫はほめてくれない 金魚は首を振る かまきりは頭を抱える...
閲覧数:25回
読了時間: 8分
第6詩集 たたずむ子ども
秋をさがす 傘の骨のように折れた彼岸花 ひまわりは重く首を垂れ 日に焼けた労働者の顔 うろこ雲はつつましく並ぶ 崩れていく方向に そろって身を傾けながら 日が落ちた雑踏で 後ろから追い越していった 「さよなら」 すぐに見失ってしまう背中 闇の中で 金木犀は位置を知らせる...
閲覧数:21回
読了時間: 14分
第5詩集 六歳と九歳の夏休み
言葉 考えてもみれば なんとひ弱な手段だ 声を大にして語るのでもなく 体中でぶつかっていくのでもない ただ拾い集めた言葉を 並べ替え 新しい意味をもたらし おずおずと紙に書き記す 誰かが扉を開けるまで そこで黙って待ち続けている ただ待ち続けている...
閲覧数:21回
読了時間: 13分
第4詩集 封じ込める(2)
落書き 走って走って 数千の山を越えて 走って走って 怪獣の群れに光線を浴びせ 走って走って 命の水を頭からかぶり 走って走って 崖の縁からダイビング 泳いで泳いで 魔の海のど真ん中 泳いで泳いで 深海の底の宝物をかっさらい 泳いで泳いで 大ダコの頭に印を残し...
閲覧数:18回
読了時間: 13分
第4詩集 封じ込める
呟きのように どうしてここにいるのだろう そう問いたげば闇が 耳もとにぶら下がっている アルファベットに色を ひらがなに香りを感じるというなら この薄い眠りは ピアニッシモのドレミ 義務にするのも ましてや仕事にするのも嫌だから レイアウトも校正もしないで ただ呟きのように...
閲覧数:19回