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鏑木詩集(新)

夕日に映えるモニュメント

                      鏑木恵子(神奈川県川崎市在住)

 

​●「春を記す 早稲田1978'

 

●「五行歌・坪庭のつわぶき

​                     (2024年4月)

 

 

 

 

 

 

女性詩人

 

 

私と同世代で

詩人として本も出版されていて

高く評価されている女性詩人がいる

文芸コンクールの表彰の会場で知り合った

その人には

てんかんなどの症状を含む重い障害をもつ息子さんがいて

一度表彰会場に息子さんを連れていらした

誰にも預けることができなくてやむなくといった感じで

 

息子さんは椅子に座っていられなくて

あちこち立ち歩き声を発し

彼女も息子さんに付き添って一緒に立ち歩き

ホワイトボードで始まった落書きにつきあっていた

会場に集まっている人たちの

視線を気にしながら

 

彼女は深く暗く幾分不気味な詩を書く

首や手や足を切り取るといった

痛々しい身体表現が斬新で鮮烈だ

詩の中でいつも流れている血は

きっと彼女の心臓から溢れ出ているのだ

 

毎日のようにネットにあげられてる彼女のつぶやきには

息子さんとの生活が多く綴られている

シャボン玉が好きな息子さん

なかなか眠ってくれない息子さん

なぐりがきのようなクレヨンの絵

 

そして彼女はその合間にも

悲鳴のように血みどろな詩を

書きつける

彼女はずっと声を上げ続けている

詩はきっと彼女を救う手立てなのだ

 

ほんのささいなつぶやきの中に感じる

並ならぬ生きる勇気

そんな彼女から目が離せない

彼女と比べて

私は何と生ぬるい世界に安住しているのか

幸福の中にうまく転がり込んだら

もうそこから抜け出したくなくて

私とて心臓から血が滲んでいないこともないのだが

 

詩の形で表現された

彼女の切り立った心

それは一つの生きる見本だ

私はここからずっと彼女を見守りながら

自らも自分の詩の在り方について

問い続けなくてはならない

詩は

私の切実な生きる手立てであるか


 

 

 

今まで作成した詩集

詳細が無事送信されました!

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