鏑木詩集(新)
鏑木詩集(新)
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大学時代の記録
●「五行歌・坪庭のつわぶき」
(2024年10月)
詩人の死
谷川俊太郎氏が亡くなった
「巨星墜つ」という感にしばし襲われた
詩の世界とは無縁の人たちには
一人の老人が亡くなっただけのことなのかもしれない
ニュースでもひっそりと取り上げられただけだった
小学生の頃から谷川氏の詩が好きだった
自らも現代詩を書くようになって
他の同世代の詩人の詩を読む機会が増えると
わけのわからない突飛な比喩をしたり
えげつなかったり
グロかったり
どんより真っ暗だったり
スプラッタな表現をする人が
あえてすごいと評されがちだということも知った
私もコンクールのためには
無理して難解な漢字を使ったりもした
しかし谷川氏の詩は
そんな衒いとは無縁で
簡単な言葉を使いながらも
普遍的なことを言い得ていた
軽妙で軽快で軽やかだった
好きな詩人は何人もいるが
谷川氏は私が最もお手本としたい作風だった
すぐれた詩はいつまでも遺る
私は何度でも読み返すだろう
学生時代持ち歩いた「谷川俊太郎全集」は
今でも書棚にある
真っ白い表紙で分厚くて
A4でもB5でもないやや小さめの版の本
辞書のようなその本は
鞄をひどく重くしていたが
持ち歩くことをやめられなかった
谷川氏にお会いすることも叶わなかったが
広い意味で詩の世界で繋がっていたと思う
谷川氏は死に際して
「僕は今、死んでも宇宙のエネルギーと一体になれると思う」
と言ったという
言葉という無限に遊べるツール
宇宙に通じる喜びを
より深く身のうちに享受できるように
私も決して書くこと諦めずにいようと思う
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