読了時間: 12分
第3詩集 君の物語(2)
機関銃の夏 太陽は空の天辺で 煮えたぎった油に放りこまれた生贄のように チリチリと泡を噴き出して あばら骨までカリカリになっている 浜辺には水着姿の家族やカップル 日に焼けたサーファーたちの いやにやせたシルエット サンダルを脱いで きわどい波の近くを...
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読了時間: 14分
第3詩集 君の物語
蛇影の月 雪が崖縁の空を さかさまに落ちてくる 人ごとのように 覗き下ろすことができるのなら 引き絞られた真夜中の月は 呼吸を苦しまずに済むだろうに もっと楽になれ どんよりした霞雲はそう呟く 不定形な望みに縁どられて 雲は白薔薇の顔で笑う 笑っているがいい...
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第2詩集 気配(2)
(主に、大学時代の作品) 身支度 山に登る前 急に部屋を片付けたくなる きっと帰ってくると思いながらも 心のどこかでかすかな疑いがある 友よ あなたも 今 片付け物をしているという 明日 共に登る山は もう冬の鎖を きつく巻き付けているだろう 森林限界を越えて 踏み跡は消え...
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第2詩集 気配
(大学1年の時の作品) 湖にひそむ 湖は空に向かって裸眼を開き 瞳の中に太陽を落とし込んでいた 年若い釣り人は自らを支点にして軽々と立つ 踏み込めば落ち葉が足元を湿らせていく 少年よ この日陰の岸から 君の垂らす釣り糸を静かに見入っていよう 君の規則正しい脈拍と...
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