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ヒナを拾う

 うかつにもムクドリの夫婦は、庭の柘植の木に巣を作ってしまった。このあたりには猫が

三匹もうろついているというのに。生まれてくるであろうヒナのために、やわらかそうな茶色の小枝を重ね重ねて、いかにもやさしい巣を作り、その中にぽろりぽろりと三つの卵を産んでしまった。柘植の葉っぱの陰に隠れて、他のだれの住まいよりも快適な新居になるはずだった。卵はほどよく温められた。ムクドリの夫婦はほほえみながら、その日を待ちわびていた。上手に育ててあげたかった。

 ある小雨降る夏の日。猫はついにムクドリの巣に気づいた。恐ろしい獣の息づかいで、柘植の木をよじのぼる。ムクドリたちは震えあがった。しまった! だがもう遅い。ムクドリの夫婦は卵を守るためにこの場所で戦うしかなかった。くちばしを牙にし、大声で叫び、爪を開き、はばたきで打つ。猫は、切実な食欲とは別の理由から、哀れな獲物を傷つけずにはいられなかった。獲物が騒げば騒ぐほどゲームは面白くなるのだ。

ムクドリの隙をついて、猫は卵を巣からはじき落とす。一つ、二つ、三つ。地面にたたきつけられた卵の中から、ヒナの悲鳴が聞こえてくる。どうしたの? どうしたの? いま生まれたらいけないの?

 卵の内側から呼びかけてくるものを前にして、皆一瞬黙り込む。猫は肩をすくめながら、あとのことは知らないよ、と無責任に行ってしまう。ムクドリの夫婦は、しばらくは泣きながら柘植の木を覗きこんでいるが、もう卵は駄目だと理解すると、あっさり巣も卵も見捨てて飛んでいってしまう。

 取り残された卵が三つ。冷たく濡れた地面の上に。そしてたまらずにヒナの卵をてのひらにすくい上げた者は、あまりにも弱い命の姿に、どうしたらいいのか分からず、すっかり途方に暮れてしまうのだ

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