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骨とトレーニング




 やけにウォーキングやダンスエクササイズに凝ってい時があった。やりすぎもあったかもしれない、お試しで行ったカーヴスで、案外筋肉が無いという判定を受けた。あんなに運動しているのにそんなはずはない、と思ったが、散歩などの有酸素運動はいくら続けても筋力アップにはつながらないし、むしろ筋肉やせを起こすのだ、というビデオまで見せられて、そうだったのかと納得したうえで、甚だ意気消沈した。

 追い打ちをかけるように、整形外科でおこなった骨密度検査で、もう骨粗しょう症レベルの骨密度だと言われた。医師が「これでは骨折してしまう」と言って目を剥いたので、深刻さをひしひしと感じた。健康のためにと思ってやっていたあれこれ、自負や自信が見事に打ち砕かれた瞬間だった。

 もともと大食いのほうではなく、やせ型である。それでも食べ物には十分気を使っていた。ごま、きなこ、カルシウムサプリなども摂っていた。何の症状も無かったが、血液検査によると破骨細胞の活動が強すぎて骨の形成が追い付かず壊れていく一方になっているのだという。

 しばらくは落ち込んでいた。60代前半でこんな調子では、もうだめだ、寝たきりの老後だ、と思った。食欲もなくなり骨粗しょう症という言葉を始終スマホで検索しては、なかなか改善しないという認識に辿り着いては、また落ち込んだ。

 女性ホルモンとビタミンDの薬も毎日飲まなくてはならない。どちらの薬にも自律神経に作用するような副作用があり、薬剤師さんに症状を言ってみたが、デメリットよりビネフィットが多い状態なら薬を続けた方がよいでしょう、と言われた。唾液も出なくて口の中の違和感が消えないなどの症状にはしばらく閉口した。

 とにかくヘタレてばかりもいられない。カルシウムの多い食品を頑張って食べるようにした。心配してくれた太極拳の生徒さんから、いわしのせんべいとか、小えびを干した健康食品をいただいたりした。

 骨がだめなら筋肉をつけようと思い、近所のフィットネスジムに通い始めた。1か月通い放題で3,300円。カーヴスよりぐっと安いし、時間制限もない。というわけで週3~4回、マシントレーニングをしにジムに通いはじめた。トレーナーがついているわけでもないので、極限まで鍛えるとまではいかないが、少しずつ錘を重くしていけるので、自分のパワーの限界を知り、それを1ミリでも押し広げていけるところがうれしい。

 ジムに通い始めて5ヶ月たったところで、骨密度検査をした。

 骨密度は、上がっていた。

 医師がグラフを見て、

「上がってますね、よかったですね」と私に言い、

さらによく数値を見たところ、10パーセントも上がっている。医師は今度もまた目を剥き、「ええーっ? こんなことってある? こんなに上がる? 機械の誤差とか・・?」と言い出した。

私も喜び半分、この数値は間違っているのかと思い、

「そういうこともあるんですか?」と聞き、

医師はなにか釈然としない顔をしながらも、

「いやたぶんこれで合ってると思うけど、念のため血液検査をしましょう」と言った。機械がおかしかったに違いないと思っているような顔。

 骨粗しょう症を華麗に脱したこの数値、ガセだったのか、正しい数値だったのか。判定はまだ後に持ち越しである。

 しかしジム通いはこれからも続けていこうと思う。

 大きい剪定バサミを両腕で軽々と扱えるようになったことが、筋トレ効果の第一の実感である。体重が3キロ増えたのは、骨や筋肉が増えたのではなく、脂肪だろうな、と自らをいさめつつ。




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