

夏の蝶
大学の夏休み、アルバイトから帰るとすぐに飼い犬のロンを散歩に連れ出すのが私の日課だった。 ある日の夕方、いつもの散歩の途中、藁葺きの御堂へ続く田んぼ沿いの道を歩いていると、突然夕立が襲ってきた。子どもの手のひらくらいの大きな染み跡が足元に次々と落ちかかり、みるみるうちに道路を黒く染めていく。一瞬にして空間は雨に埋め尽くされ、轟きわたる雨音がすべての音を消し去っていった。さっきまでの薄い曇り空が嘘のように、真っ黒な雲が厚ぼったく重なり広がっていく。 どこかに雨宿りできるところを探さなくては。私はロンの引き綱を引っ張りながら、人家のほとんどない田んぼの道を抜け、野球場横に新しく建ったばかりの小さなレストランの軒先に駆け込んだ。 すでに私もロンも全身ずぶ濡れになっていた。ロンは乾いたコンクリートに腰を落ち着けると、何度か胴震いをして雨のしずくを振り飛ばし、念入りに体中を嘗め始めた。 雨は尖ったつららのような形で地面に突き刺さってくる。ロンは身づくろいの間にも怯えたように空の匂いを嗅ぎ、首をかしげていた。私は心細くロンを抱き寄せながら、シュロの木
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