

瓢箪池
私は、遠い記憶を呼び覚ます。それは瓢箪池と名付けられた龍の涙のような池のことだ。 中学1年の夏休み、例年7月31日は、全校登校日で、生徒会主催の半日ハイクが行われることになっていた。朝から肌を焦がす陽射しが照り付け、校庭に整列しているだけでも体中の汗がしぼり取られてしまうような暑さだ。 生意気盛りの中学生が、こんなおしきせのハイキングを喜ぶはずもなく、 「全く愚にもつかない風習だぜ」 「一体こんな真夏に、だれがハイキングなんてしたいと思うの?」 そう口々に毒づきながら、早くも水筒の水をがぶ飲みしているのだった。 実行委員長らの一通りの挨拶が済むと、乱れた列のままにぞろぞろと校門を出て歩きはじめた。目的地は北の森の方にある瓢箪池だった。 中学校裏の街道を横断すると、両側を田んぼにはさまれた細い砂利道が森に向かって一直線に続いている。途中、数本の巨大な銀杏の木に取り囲まれた小さな神社を右手に見ながら、中学生たちの列は教師たちに見張られていない気安さで、こづき合いながら、ふざけ合いながら、緩慢なペースで歩いていった。 その道は私の通学路でも
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