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第27詩集 野良猫だらけの町に住みたい(2)
白髪発見 あらあらこんなところに白髪が そう言って美容院の人が ハサミで根元付近からぷちっと切る 白髪ってなぜかピンと立ってるんですよね どなたの白髪もそうです 不思議ですね 白髪だからといって死んでいるわけでも 瀕死の植物状態でもないのだろう 赤ちゃんの生えたての髪の毛も...
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第27詩集 野良猫だらけの町に住みたい
泰山木 装飾品をすべてはずし 化粧もすべて落とし 命の粋の限りを尽くして たったひとりで 赤ん坊を生み出すとき すべての女性は 朝日を浴びた 真っ白な泰山木の花のようである --------------------------------------------------...
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第26詩集 虫の触覚(2)
同い年 夫と私は同い年で 学年も一緒で 最後は学校も一緒だったから 何かと話は合うのだが 給食のミルクが 脱脂粉乳だったか牛乳だったかで どうも意見が分かれる 川崎で育った彼と 宇都宮で育った私 彼が銀色のミルク缶に入った あの生暖かい脱脂粉乳を経験していないとは!...
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第26詩集 虫の触覚
本当のところ 神は 人が背負いきれない荷は負わせないというけれど 時々 そうではないだろうと思う テレビニュースや新聞記事を見ていて ひとりの人間が負う罪としては また耐えなくてはいけない運命としては あまりに苛酷すぎるのではないかと思うことがある 仏教を熱心に説く人に...
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第25詩集 神のように(2)
春一番 ビルの外に出ようとして 強風が吹いているらしいのが ガラスドアの向こうに見てとれた まだ長いコートを着ている女性の 裾が大きく翻っている 髪がさかさまに舞い踊っている 「そんなことはもう超越している」が 以前の私の口癖だった ビルの谷間を吹き狂っている風に向かって...
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第25詩集 神のように
もうすぐ春 すべて葉が落ちて やっと本当の相が見えてくる 傷のない虫眼鏡で 広げてみた世界 しゃがみこんだ足もとで 誰にも知られずに 冬を越していく 常緑の草 比べることで 保たれる正気もあり 崩れていく自我もある 抱いた猫は 気づいているだろうか...