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鏑木詩集 コンクール出品詩
時間図 地図に載っている道を歩いているとき わたしは安心している 迷うこともない きっとどこかにたどり着く 駄菓子屋までの近道や かたつむりの這っていた垣根の道や 草に隠れた石段も 確かに地図に描かれていたのだ それと同じように 時間にも道筋があって どこへ通じるのかは...
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五行歌
五行歌まとめサイト 「五行歌・坪庭のつわぶき」 ---------------------------------------------- 読売新聞「よみうり五行歌」に投稿した作品 丸い焦げ跡を 地面に残した 年越しの焚火 甘酒の温かさで 一年を開く 一月の軒先に...
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第35詩集 10×14の試み
産経新聞「朝の詩」に投稿した作品。1行10字、14行以内。 発見 気紛れに トイレットペーパーの 芯を解体したら 平行四辺形だった 平行四辺形を こうぐるぐる巻いて ロールの芯 ちっぽけなものにも 深遠な思想がある ひとしきり感心しつつ 私はトイレの中で 哲学にふける...
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第34集 夕焼けの実証
国語教師 何かのきっかけで 国語の教師になっていたとしたら 私は毎授業 詩をひとつずつ 読んであげていただろう ほとんどの生徒は きっと馬鹿にして聞き流し 何の思いも残さない しかし 一人ぐらいはいるだろう 詩とつながる運命をもった かなしい子どもが その子どもは...
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第33詩集 田んぼマニア
幼児の食卓 おいしそうに食べてくれるのなら ぐちょぐちょにしたって ぼろぼろこぼしたって ばちゃっとぶちまけちゃったって テーブルの上はごはんと味噌汁と わかめと豆腐の海 きゃあきゃあ言いながら 手のひらでかきまわす もはや食べ物ではなくなっても...
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第32詩集 バリトンの声
声 バリトンの声を持つ人を 背中の耳で聞いていた よく響く弦楽器のような 学びあう学生たち カフェテリアの午後に 組み立てたものを ゆるやかに崩しながら 淡い冬の雲が行く 離船の時… 「さようなら」を言うならば ドイツ語で あの張りのある低い声で...
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第31詩集 同居しているもの
ダミさんの名前 娘が 今日は面白い発見をしちゃったよ と言いながら帰ってくる 近所の小学生がダミさんのことを 「ゴロスケ」と呼んでいたというのである まあ ゴロスケさんね いいねいいね ゴロゴロしていてスケベだからかいと夫が言う そうではないでしょ...
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第30詩集 ダミさん
反省 私の一言が 誰かに静かな致命傷を負わせているということもある そんなことは全然気づきようもないので 大笑いして過ごす時間が 果たして許されているのかどうか 猫の背中をなでたら いきなり毛玉を吐き出しそうになった やさしいつもりの手が...
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第28詩集 猫の箴言集
揺れる 雲は どこにも追い詰められないで ただ流れたり消えたりしている 今日 すべての花びらは風にふるえ ぴくりとも揺れ動かない枝を持つ木など ひとつとして無い ------------------------------- 生きる 後ろ足が一本取れたって...
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第24詩集 火星に向かって
雪の日に生まれて オーバーやコートなどを 「重衣料」と呼称する いかにも雪国の人らしいあなたの かたわらには生まれたての赤ちゃんが 舞い飛ぶ雪が描く 果てしない白さ 激しくきっぱりとした空気の中に あなたはその命を送り出したのだ すべての母親が持つ聖なる勇気によって...
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第23詩集 ハチの巣穴の隣どうし
三日月 やつでの葉の上に うずくまる青い蛙の中に 心を溶かし入れてきた 薄い心臓の壁を 冷たい血がたたいている 三日月を見上げている 秋風はまだやわらかい この口は虫を食べる にがくざらついた内臓も かたく筋張った足も わたしは 三日月を見上げている 足先を振って...
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第22詩集 木の属性
風 揺れている洗濯物 熱い手を水の中へ 今 通り過ぎた人は 喜びと悩みと疲れを同時に抱え どちらかといえば 薄紫の花のよう 何かを始めよう 澱む水の中にぼうふら 風はいい具合には吹いてくれず 悲しみに目が回る日は 風の動きをまねて 白い大きな鳥の絵を...
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第20詩集 月の観測
月の観測 南西の空に 四十二度の高度で 夕方六時 三日月が現れている おとといは新月のはずだった それが一月一日の月だと 二〇〇一年になって初めての月だと 世界のどこかで 誰かが同じように 記録しているだろうか 三日月はいつも 家の真向かいにある団地の上に現れる...
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第14詩集 まみず
桜 眠ればいいのに 夜は 戻ればいいのに 美しくなくていいから 幸福を見せてくれなくていいから もっと静かな もっと長い息をついて 夜に 窓は閉めておくから そこに沈んでいて うっかり眠っていいから -------------------------------------...
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第10詩集 もっと聞こえていた
聞こえていた もっと聞こえていた 目覚めた虫の 小さなあくびまでも ------------------------------ フルート 少年はフルートで ビートルズのナンバーを吹いていた (その曲はフルートの音によく似合った) 少し息が漏れてざらざらした音色だったけれど...
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