太極拳 講師雑感
- 2025年8月13日
- 読了時間: 9分
更新日:5月5日
40、私の聖地(真夏)
いつも太極拳の練習ができる公園やお寺、神社を探しています。
条件は、広いこと、人の出入りがほとんどないこと、日陰が多くあること、緑豊かで涼しいこと。この中で最も重きを置いているのが、日陰があること、です。
真夏に外で太極拳の練習をするとしたら、たぶん、早朝か、夕方か、夜ということになるのでしょう。
日中でも出来る場所はないかとあちこち探し続けて、とうとうみつけたのです。私だけの秘密の場所を。
それはとある小高いところにある神社で、少し石段を登ります。小砂利の敷き詰められた広い境内。社務所は結構奥の方にあるので、宮司さんたちに見られることもありません。お参りに来る人もほとんどなく、何より巨木が生い茂る森を擁していて、日陰が多く夏でもこの一角はとても涼しいのです。
ああ、気持ちがいいなあと思いながら境内の隅のほうで太極拳をゆっくりと通します。鳥の声やカナカナの声が聞こえ、見上げれば巨木たちの緑が風に揺れています。
これが家から自転車で20分ぐらいのところにある私の聖地です。この場所だけは誰にも教えられません。
41、動画を見て学ぶ
You tubeの動画には再生速度を変える機能があるのをご存知でしょうか。動画の右下の方にある歯車(設定アイコン)をクリックすると、再生速度という項目が現れます。
音楽や何かの説明の動画を見る時に再生速度を変えることはありませんが、太極拳など細かい動作を見直したい時、スロー再生にすると少し見えてくるものがあったりします。
同じところを何度も繰り返しスロー再生することで、右手、右足、左手、左足の位置関係をじっくり確認することができます。太極拳や気功の動画を見て、よく分からないと感じたら、スロー再生を使ってみるといいと思います。逆に、全体を素早く確認したい時は早送り再生してみるといいかもしれません。
私もやっと5~6年前に知った機能です。新しい動きを覚えようとするとき、結構役にたっています。
見知らぬ動作を解明するために、20回も30回も同じ部分を再生することもあります。動画が正面向きで撮影されている場合、その背面(逆向きの動き)を想像しなくてはならないので、何倍も頭が疲れます。
今まで覚えたもの忘れたくないので、動画でも時々チェックします。自己流になってしまっていたり、全く抜けてしまっている部分を発見すると、はあ~、覚え直しかと、とため息をつきたくなります。
新しい太極拳を覚えるのに数ヶ月はかかるとして、それを忘れないために、更に何年も復習し続ける必要があります。やめたらきっとたやすく忘れます。
数限りなく太極拳動画をアップしている方々の日々の鍛錬を想像することにつけ、私はどこまで到達し得ているのかと思います。歳を取ったから、体力が落ちたから、疲れやすくなったから、そういう言い訳をするのはもう少し先送りにして、今はできるだけモチベーションを下げずにいたいと思います。
ひと昔前はネットで動画をチェックすることもできず、教わったことの復習もままならなかったことを思えば、今の時代はとても恵まれているといえましょう。
42,新しい学び
陳式太極拳を学びはじめました。趙堡混元太極拳という太極拳です。今までやってきた太極拳とは全く違って全部見知らぬ動きです。これをゼロから覚えるにあたって、一体どれだけ日数または年月がかかるのか。普通の太極拳を学びはじめた頃の、途方に暮れたような先の見えない感じに引き戻されるような思いもしています。これが初心に返るということなのかもしれません。
でもやってやろうじゃないかと思います。慣れ切ったことを日々漫然とやっているよりはできないこと、知らないことに挑戦したい。動ける限り動けるこの体を感謝し先に進みたい。
60歳を過ぎて酔拳を学びはじめて、大会で拍手喝采を浴びたと嬉しそうに話す女性に会いました。いい冥途の土産になったと。
歳を取ってから花開く才能もあります。いくつになっても何かを学び始めることはできます。今、新しい学びを一つみつけました。
43,推手
陳式太極拳を習っている先生に腕をねじ上げられる推手をしていて、
「本気でかかってきて」
と言われたので、肩をどついたり、足で蹴ろうとしたり、ぐるぐる回転したりして滅茶苦茶もがきました。子どものように暴れまわったのが結構面白かったです。他の皆に笑われました。50歳台の、体格の立派などっしりとした男性の先生だったので、思い切りぶつかることができました。
太極拳でも、流れるように型を通すだけでなく、推手といって二人組み合って一つの動作の意味を深める練習方法があります。私はコロナの時期をはさんで人の体に触れることに妙な遠慮が生じてしまっていましたが、陳式の先生はそこの遠慮が全くありません。
生徒みんなねじ上げられて悲鳴をあげながら、先生に本気で挑みかかったり、殴りにいったり。何か新鮮な感じでした。普段全く眠っている戦う気持ちがしっかりと具体化していくような気がしました。
44、強健
陳式の先生から新年のご挨拶のメールをいただきました。
「今年も太極拳の普及と、皆さんが強健になるようにと、レベルアップに努めてまいります」
「強健」と言う言葉に、ファッと目を見開きました。結構年配の方も多い会員さんに「強健」を求めてくださっているということに、とても前向きな力強さを感じたのです。
以前うちの教室に見学に来てくれた方のうちお一人が、「かえって腰が痛くなってしまった」という不満の声を残して帰られたことがありました。気功法の何かの動作が腰に障ったのでしょう。
年配の方で腰や膝、肩に痛みを抱えていらっしゃる方は多くいます。会員さん全員に同じようにきちっと型どおりに動いてもらうというわけにもいかないので、各自のできる範囲で、決して無理をしないようにと、いつも教室で言うようにしています。どこか保守的になってしまうのも、太極拳の練習で体を痛めて欲しくないからこそ。
それでも「強健」になってもらいたいという思いは消してはいけないのだと思っています。筋力の維持、できれば増強。皆様の心身の健康に寄与できる教室でありたい。
それにはなにより私が「強健」でなくては。実際、まだまだ自信たっぷりに皆さんの前に立っているわけでもないのです。
いまだドンジャオがひょろひょろな私。今年のキーワードは「強健」。できるだけ「強健」に近づくために、日々の努力を怠らずにいようと思います。会員さんにも心密かに「強健」であれ、と思っています
45、太極拳のBGM
太極拳の自宅練習をするにあたって、ウォ-クマンで音楽を聴きながらおこなっています。「ゆっくり」を保つために、音楽の効果を借りています。
最近はまっているのは、ステファン・ハウザー(Stjepan Hauser)氏のチェロの曲や、エリオット・トルド(Eliott Tordo)氏の二胡の曲などです。
Youtubeで演奏動画を見ることができますが、青く広大な海を背景にとか、深く静かな森の中でとか、映像的にも圧倒的に美しく、視聴しているとしばし時を忘れます。お二方のビジュアルも麗しいし。
チェロの音色は奥行きが深く、エリオット氏の二胡も、高音を押さえたチェロに近い音色。曲も雄大なスケールを感じさせてくれるものが多く、太極拳と合わせると息が深くなります。
「中国音楽」「二胡」などで検索すると、多くの曲が出てきますが、曲名や、作曲者名が現れてこないものが多く、良いなと思っても次にその曲を探す手立てが無い時があります。生成AIで作られた曲なのでしょうか。動画の人物も生成AIぽい、とってつけたような美男美女だし。
やはり本物の人間が本気で曲に取り組んで真摯に演奏している姿は美しいし、感動的です。その曲と共に動く太極拳は、無音の中で行うものより、更に空間が広がり格別の感懐をもたらすように感じます。
静かでゆっくりとした美しい曲というと、悲し気な寂しい感じの曲であることが多く、自分が自宅練習で使う分には何ら問題はないのですが、教室で皆さんの練習用に使うとなると、ちょっとこれはしんみりしすぎているかなと思うときがあります。いい曲でテンポも合ったとしても、悲しさ寂しさが表に立ってしまう曲は教室では使わないようにしています。やはり生徒さんの練習用には明るめの曲のほうがいいでしょう。太極拳をしていて、心が落ち着くどころか沈んだ気持ちになってしまうのもよくないし。
なかなか曲の選別も難しいのですが、探している過程で今まで知らなかった美しい曲、優れた演奏家に出会う時もあり、曲探しも私の楽しみの一つになっています。
46、筋肉に訴える
太極拳も1年以上続けていれば、なんとなくそれらしく動けるようになるでしょう。まだ1人では動けなくても、まわりの人の動きを感じながら合わせていくことはできるようになると思います。
ひととおり動けるようになってちょっと余裕ができると、その後に感じることは、これは果たして運動になっているのか? という疑問かもしれません。
動きをつかもうとしていた頃の一生懸命さに比べて、ただ軽く型をなぞっているだけでは確かに全然疲れないし、特に運動したという感じもしない。「太極拳ってあまり運動にならないと思うんですけど」という疑問を投げかけながらやめていったかたも知っています。私自身も生徒だった時は、特に疲れた感じもなく汗もかかず、やや退屈な気持ちで教室に参加していた時もありました。
けれど指導する立場になって、太極拳は静かで楽そうで何も力を使っていないように見えて結構きついと思うようになりました。
太極拳は一種のウォーキングです。それも超スローペースのウォーキングです。片足ずつに全体重を乗せながらゆっくり歩くということはどれほど筋力を要するか。それをまざまざと感じるようになりました。
太極拳の運動の効用を感じるには、できるだけゆっくりと、できるだけ歩幅を広くしてやってみることです。独立(ドゥーリー)、蹬脚(ドンジャオ)など足をあげる動作も、上げる位置を少しでももっと上に上げていけるようにと、努力目標を持つといいでしょう。
そしてもっとも大事なことは、起勢(チーシー)で膝をゆるめ、体をわずかでも下に沈めたなら、その位置をずっと保っていくということです。これは簡単なようでいてかなり難しいです。試しに膝を伸ばした棒立ちの状態で太極拳をやってみると、なんら筋肉に働きかけるものがないと感じるでしょう。太極拳が運動として物足りないと感じるかたは、膝のゆるめ方が足りないのかもしれません。もちろん膝に痛みなどを抱えているかたは無理せず、痛みの出ない範囲で動くことが肝要です。
ひととおり動けるようになったと思ったとしても、それはやっと太極拳の入り口に立ったにすぎません。次の段階では、どこの筋肉がどう使われているかを意識するようにし、特に足の筋肉に効く動きを自分のペースでつかんでいってください。そうした後にやっと太極拳は鍛錬としての本領を発揮するのです



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