二階堂冨久子様 (自死した二階堂優の母親へ 二階堂優の遺稿集のお礼)
お手紙どうもありがとうございました。
私の盛書房様宛の手紙を読んでいただいたそうで、思いがけず、また恥ずかしく思っております。お母様にお読みいただけるとは思ってもみませんでしたので、ついこまごまと優さんのことを書いてしまいました。お気に障る点が無かったことを祈ります。
優さんの作品集は折々に読ませていただいています。どの作品にも天衣無縫の詩情が流れていて、独特の軽みもあって、ぐいぐい読ませる力がありました。語句の使い方、文章の運びなども自在でこれから先を期待させてくれる作品ばかりでした。これが最初で最後の作品集であることが残念です。大切に大切に繰り返し読ませていただきます。
陶芸の方はもう二年目になりますが、まださほどうまくはないのです。でも一人で、成形、焼成まですべてをやれと言われれば一応できるぐらいにはなりました。
成形はともかく窯焚きは十二時間炎の調子を見ていなくてはならないので、体も神経も疲れます。すごく熱いですし、危険です。軽い気持ちではできません。いまだに怖いです。
ご注文くださったコンポート皿ですが、心をこめて作らせていただきます。これから陶芸に不向きな冬になってしまうので、窯焚きも減ってしまうのですが、来年の春までには完成してお届けしたいと思います。色の指定など、ありますか? 白や茶色、緑色っぽい釉薬があります。
では皆さま、お体にお気をつけてお過ごしください。
お手紙くださったこと、感謝しております。
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宮迫典子様 (学生時代の友人 秋田在住)
お便りありがとう。お元気ですか? こちらは初雪も降り寒い日が続いています。そちらはもっともっと寒いのでしょうね。
一月ともなると粘土が凍ってしまい、せっかく作った作品がボロボロに壊れてしまうため、今は比較的のんびりと仕事をしています。こういう仕事は季節(気温・湿度)に大きく左右されるため、必然忙しさも偏ってくるわけです。4月・5月になればまた猛烈忙しくなってくるのだから、遊んでいられるのも今のうちだけです。
就職した友だちとよく話すのですが、仕事をするにあたって一番大切なことは職種ではなく人間関係ではないかということです。仕事自体つらかったりつまらないものであっても、一緒に働いている人が思いやり深いやさしい人だったなら、それだけで仕事のつらさも半減するのではないでしょうか。
宮迫さんも高校の先生というお仕事に慣れるまでは随分苦労したのでしょうね。それこそ人を相手の仕事ですから、勉強を教える以前に生徒たちの心をつかむ努力もしないといけないだろうし。私はやはり教師にはなれなかったと思います。人とどう向き合えばいいのかいまだによく分からないので。
私は、先生と二人きりの陶房にこもる生活なので、先生が仕事に追われてピリピリ苛立っている時など、半日でも一緒にいるのがつらいです。愚痴をこぼし合える仲間がいるわけでもないので、不機嫌を一身に浴びてしまうわけです。またそれとは逆に、先生が上機嫌で笑顔でいてくれると、夜遅くまで窯詰めの仕事をしていても一向につらいとは思いません。
先生のご機嫌だけうかがっていればいいので宮迫さんからすればあまり苦労は無いほうなのかもしれませんが。
それから「例の彼」とは、まだ付き合っています。日曜日ごとに山にハイキングに行き、一緒に石仏の写真などを撮って歩いています。彼とは大学2年の時からの付き合いですから、もう足掛け4年。楽しかった時間や思い出もたくさんあるのですが、いつも何かで悩んでもいたようにも思います。何度もケンカをしたりして、泣いたりして。人を愛するということの厳しさもずい分学ばされたような気がします。
彼とはいつか結婚するんじゃないかな。でもまだまだ先のことです。私はあまり結婚に夢は持っていなくて、自分一人で好きに暮らしていた方が気楽でいいかもなどと思っています。孤独は嫌なのだけれど、人と家族を作ることに恐れを持っている自分をも強く感じているのです。臆病なのです。でもきっといつか結婚するのでしょう。そしてその相手は彼であってほしいと願っています。
私もあとちょっとでもう24歳です。宮迫さんは私より一つ下だから、もう23歳にはなった? まだまだ結婚なんて考えてないよね。今はお互いにお仕事を頑張りましょう。
いつかそちらに「きりたんぽ」を食べに行きたいです。「なまはげ」とかも興味あります。
ではまた。
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宮迫典子様
最近こちらは暖かくなったり寒くなったり。でも近所の梅はもう八分咲きです。
陶芸の先生は最近用事がちで朝遅く来て午後3時頃には帰ってしまったり、全然来なかったり。私にとっては解放感で嬉しさいっぱいですが、ひとりぼっちの時間が長すぎてもかえって寂しく感じてしまいます。
一人で一日中壺に絵付けなどしていると、だんだん息が詰まってきます。この間は3日間誰にも会わずに黙々と絵付けをしていました。考えが悲観的になっていくのが自分でもわかって、まずいなと思いました。
宮迫さんの方も大変そうですね。反抗的な生徒がいるとそれだけで悩んで疲れそう。性格がよくて勉強もまあまあ出来る子ばかり相手にしているわけにもいかないのだろうしね。
本当に疲れてしまったなら、なにがなんでも教師を貫かねばとか思い詰めない方がいいかもしれません。宮迫さんの健康が第一です。命を切り詰めてまでしなくてはならない仕事など無いと思います。
私も好きで陶芸の道を選んだけれど、思ったようには自分のやりたいこともできず、先生がなぜかいつも不機嫌なのでつらいなあと感じるときもあります。そういうときは、いつやめたっていいのだからと考えて、気を楽に持とうと心掛けています。彼氏がいるというのも善し悪しで、東京で挫折したからといって、おいそれと実家に帰るわけにもいかないし、そういう歯止めもあってなんとか東京で頑張っているわけなのですが。
彼もそろそろ結婚を意識してきた様子で、先日「今度家を改築することにした」と言って図面を描いて見せてくれたのです。2階が夫婦の部屋ということでその一画を指差して「ここが恵子の部屋」と言ってくれるのは嬉しいのですが、彼が私に家族との同居を望んでいるのだという気持ちを知って、ちょっと気が重くなったのです。二世帯住宅で台所は別にしてくれるそうです。彼のご家族はとても良い人たちで、たぶん嫁姑的トラブルは発生しないだろうとは思っているのですが、やはり不安です。彼のご家族に認めてもらえるようないい嫁にはなれないことは自分が一番よく知っているので。彼とはもう少し話し合ってみます。家を建て替えるという計画は変えられそうにないのですが。
今度今まで書いてきた詩をまとめて詩集を自費出版します。30万円かかる見積りです。4月半ばにはできあがるから、宮迫さんにもお送りしますね。全然うまくもないのだけれど、20歳までの人生のまとめとして作りました。
油絵を描いているそうですね。いつか見せてくださいね。4月からもっと楽な高校に転任になるといいですね。素敵な若い男の先生がいるとなおいいですね。
ではまた。
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魚谷様 (文通仲間 自宅で木彫りの仏像などを彫っている方)
すっかりご無沙汰してしまいました。急に冬めいてきて朝晩はとても寒くなりました。
木喰仏を刻まれていらっしゃるとのこと、きっと可愛らしいお顔の仏さまでしょうね。
以前送っていただいた木彫りのお面は、今も私の部屋にかかっています。味わい深い表情をしたお面、厳しい顔のように見えて微笑んでいるようにも見えます。
私も時々陶板に仏像などを彫りますが顔が一番難しいです。重要なのは目だと思います。
木喰仏はほっぺたが丸くて可愛らしいので彫っていてほのぼのしそうですね。どれも笑顔というのが素敵です。
夏には、飛騨高山の方を旅行してきました。合掌造りなど初めて見ました。絵葉書でしか知らなかった風景を実際に見て感動しました。このままいつまでも残って欲しい日本の風景です。
高山の町をちょっとはずれた所に、なんというお寺だったか名前は忘れてしまったのですが、円空仏を保管しているお寺があるのです。ちゃんと円空博物館として公開しています。でも丸畑の木喰仏と違って、なんだかきれいすぎて最近彫ったような感じで、本当に本物かなとちょっと疑ってしまいました。
秋には尾瀬にも行きました。紅葉がとても美しかったのですが、ちょうど台風の日にぶつかってしまい、帰りはすごい暴風雨の中を歩きました。
今日は、近くの小学校に新潟から来られたおじいさんたちの草鞋づくりの講習会があったのです。藁をなうことからはじめて、草鞋の形になるまで、すごく時間がかかりました。でも出来上がるとうれしいものですね。片足だけなので、もう片足も作りたいなと思ったけれど藁が手にはいりません。
木喰仏について何か資料が手に入りましたらお送りします。
ではこれから冬に向かってますます寒くなりますので、お体にお気をつけてお過ごしください。ではまた。
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魚谷様
お手紙どうもありがとうございます。頑張っておられるご様子が伝わってきます。そんな風に一つのものごとに全身全霊で打ちこめられたらどんなに素晴らしいことでしょう。 利害や打算を超えて、ひたすらに仏身を刻もうとするお姿は崇高でさえあると思います。彫り上がったらお写真ででもぜひ拝見させてください。
十二月三日は、秩父夜祭を見に行きました。夜七~八時の電車はもう超満員で、秩父駅も相当な人出でごった返していました。ちょうちんのついた屋台が引き回され勇壮でした。でも人が多すぎて思うように前に進めませんでした。夜空には花火が連発し、ちょうちんをかざした人々が大きな掛け声を掛けながら走りすぎていきました。とても寒い夜でしたが、お祭りの熱気で一杯でした。
もうすぐ年末ですから、今はいろいろと仕事場の後片付けなどで忙しいです。
毛糸で、小さい草鞋を作ってみました。草鞋に見えますか? 健脚のお守りのつもりです。よかったらもらってください。
では、風邪などにお気をつけてください。
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魚谷様
もう暮れも押し詰まってきました。長いような短いような1年でした。
いつもながら、魚谷さんのお手紙には感動させられます。生きる勇気と気迫のようなものをひしひしと感じるのです。
何か一つのことに打ちこんでいると、こんなにも強くなれるものでしょうか。
私も、一生打ち込めるものをずっと探しています。ある時は詩作が、ある時は陶芸が、私の一生を貫く仕事のように思えました。しかし、それらに、魚谷さんのような気迫をもって打ちこんでいるかと問われれば、否、と答えるしかありません。私の生きる姿勢に、おのずと安楽を求め苦労を避けようとする傾向があることを、私は恥じなければいけません。
この1年間、魚谷さんとお手紙を交わし、また、いろいろなお手製のものをいただき、多くのことを学ばせていただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。どうぞ来年もお元気で木彫りのお仕事をお続けください。
たとえそばに誰がいようと、人はだれでも孤独なのではないでしょうか。日々は常に自分自身との闘いです。困難にぶつかってもがく時でも、いつも自分自身でありたいと思っています。どうか遠くで見守っていてください。
いつかお会い出来る時があるといいですね。
では健康にお気をつけて、よいお年をお迎えください。
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魚谷様
お手紙どうもありがとうございます。それに木彫りのブローチとペンダント、とても細工も細かくて見事ですね。伏見稲荷のお守りもありがとうございました。いつもながらの暖かいお心遣いに何とお礼を言っていいのかわかりません。お互いに家が近ければ、おいしいものを持っていったり、おしゃべりしたりできるのになあと残念に思います。
私の方は1月6日から仕事が始まりました。冬場は粘土が凍ってしまったりして作品が割れてしまうのであまり作ることができません。だから1月、2月は部屋にこもって絵付けばかりしています。やはり集中力にも限度があって3~4時間も続けばいい方で、意に染まぬ仕事をしていると1~2時間でもう嫌になってしまいます。
またこちらにご旅行なさる計画がおありですか? その時はもし私でよかったらいつでもお役立てください。ご連絡くださればお迎えにあがります。
木彫りの作品をお写真で拝見させていただきましたが、とても独学で彫られた作品のようには見えませんでした。何事も一心に打ちこめば素晴らしい作品ができるのですね。とても励みになりました。
私は仕事で陶芸の先生とうまくいかないこともあって腐っていることも多いのですが、魚谷さんが頑張っておられるのだと思うと元気が出ます。
ではまたお便りします。
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坂口美子様 (学生時代の友人)
お手紙、今日着きました。3月24日にご結婚されるそうですね。おめでとう!
心から祝福いたします。思えば坂口さんはいつも私の何歩も先を歩いていたような気がします。学生時代は、坂口さんの勇気にいつも学ばせてもらっていました。彼氏さんとお二人、強い気持ちを貫きましたね。本当によかったです。
披露宴、喜んで出席させていただきます。普通のスピーチじゃなくて私の詩をご所望ですか? ううっ。頑張って精一杯書いてみますが、上手に書けなかったらどうぞご容赦を。
私は1月30日から1月5日まで帰省していました。今年は結婚した兄夫婦が赤ちゃんが産まれるのを機に実家に同居を始めたので、なんだか勝手が違い気を使ってしまいました。
いつも東京に戻る電車の中で一人暮らしはいやだいやだと考えているのですが、また忙しい生活が始まると、一人も悪くないなどと思い始めて結婚の問題も後回しにしてしまうのです。
桂木くんとは、いつか結婚しようと言い合ってはいるのですが、具体的にいつ、という話にはなかなかなりません。就職して1~2年ではまだ仕事に慣れるのに一杯いっぱいだしね。
それに具体的に結婚の話が出たら、それはそれで悩みそう。いつも生活が大幅に変わるのは女性の方だから、いろいろ環境に慣れるまできっと疲れてしまう。私は人一倍環境の変化に弱いから。
ご結婚後は、東京に住まわれるのですか? すぐに会いに行ける場所だといいのですが。彼氏さんは商社にお勤めという事ですから、海外に行ってしまうこともあるのですか? そうなったらちょっと寂しいけど、それも刺激的で豊かな経験が得られそうですね。
これからご結婚の準備とかで忙しくなられることでしょう。坂口さんの美しい花嫁姿を見られることを今から楽しみにしています。
ではまた。私にお手伝いできることがありましたら、言ってください。
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魚谷様
お元気ですか。こちらはおととい雪が20センチも積もり、今日も午後から雪がちらついています。
そちらはどうですか。今年はいつもの年よりぐっと寒いような気がしますね。
私の仕事の方は今のところ開店休業の状態で非常にひまです。なぜなら、粘土で成形しても土が凍ってしまうと割れ目が入ってしまい駄目になってしまうから。仕事場に行ってもストーブに当たりっぱなしでろくに仕事をしていません。お給料をもらうのも気が引ける感じです。
年末は2泊3日で伊豆に行ってきました。爪木崎の水仙群生地、堂ヶ島の洞穴めぐり、大沢温泉の露天風呂など。伊豆旅行ももう二度目で、だいたい有名なところは行き尽くしてしまったので、さほどびっくりするような所は無かったのですが、輝いている海を見られることだけでも伊豆は最高です。
今年はやはり寒いせいか水仙が咲くのが遅れているようでした。堂ヶ島の洞穴めぐりは5~6人が乗れる船で海に出て洞穴の中を一回りするのですが、なかなかスリルがあって、また洞穴の上から差し込んでくる光が美しかったです。
木彫りの方は進んでいらっしゃいますか? 屋内のお仕事だと天候とか気温に左右されないから冬でも大丈夫ですね。
うちの仕事場はプレハブだからもろに気温に影響されてしまうのです。
早く暖かくなるといいですね。
ではまた。
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桂木隆司へ(出さなかった手紙 結婚直前)
いろいろな事を含めて本当に感謝しています。
新築の家のこととか式や新婚旅行のことなど、隆司にばかり負担をかけているようで、Kは申し訳なく思っています。
隆司がリードしてちゃんと段取りをしてくれなかったら、こんなにスムーズにはいかなかったでしょう。あらためて隆司の行動力に感謝です。
これから一緒に暮らすにあたって、なにもそう大げさに考えることはないと思うけど、きっと、今まで気づかなかった習慣の違いとか、ちょっとした生活の違和感とかお互いに新たに分かってくることもあるでしょう。
Kはわがままだから、自分の思い通りにいかないことがあるとムッとして怒るかもしれない。石井先生と一緒に長い時間いて、自分がいかに怒りっぽく忍耐力も無い人間であるか気づいちゃったんだ。
けれど、気持ちの底では絶対に隆司無しではいられないのだし、隆司以上に好きな人はもう現れないだろうから、Kがすねたり怒ったりしていても、どうかKに愛想を尽かさないでください。
思えばこの6年間。隆司のことだけで明け暮れていたような気がします。他の男性と話をすることとはあっても、お付き合いしたいと思った人はいませんでした。隆司ほど、気持ちの通じ合う人はいない。
TELも毎日欠かさずよくしたね。隆司は家からかけるのだから家の人に聞かれて具合の悪い思いもずい分したでしょう。TELやめようと、いつ言われるか心配した時もありました。隆司のTELのおかげでどんなに元気づけられたかしれません。これからはもうTEL無しになるけど、それと同じくらい話をしようね。
Kは隆司の負担にならないようにします。たぶん結婚しても相変わらず好き勝手にいろいろな事に手を出して何かやっているでしょう。
隆司もどんどん好きな事をやってください。隆司の夢を手助けできたらうれしいです。
去年は、山のことで少し不和になったね。隆司が夜中一人で登りに行った東北の月山‥‥朝、宿で一人で食べる朝食は寂しかったんだよ。あれ?昨日いたお連れさんは?先に帰っちゃったの?みたいな目で仲居さんに見られてさ。尾瀬の燧岳も‥‥。
隆司が山のことばかりしか考えていないようで、Kは寂しかったのです。すねていました。
隆司が山を好きなことはとても素晴らしいことで、山に登ることで生きている実感を得られているのなら続けていってほしいです。隆司が一人で山に行っているときは、すごく心配してしまうけれど、私のことは気にせず行ってください。山は生きがいなんでしょう?
私もできれば隆司と同じくらい山が好きになれればいいのだけれど、それには隆司と同じくらい体力がつかないと駄目だと思う。Kにも登れるくらいの山なら、時々一緒に登りましょう。だけど先にどんどん行かないでね。
最近になって山無しで隆司と会うことも多くなり、山に登っている隆司もすごいと思うけど、スーツ姿の隆司もなかなか素敵だと思いました。隆司はかっこいいからきっと女性にもてると思う。もてるのは大いに結構だけど、決してKのことを忘れないでいてください。Kよりきれいでやさしい人はいっぱいいるだろうけど、Kほど隆司を求めている人間は絶対にいないのだから。
それから健康にもお互いに気をつけようね。特に胃腸がKの弱点だから、食生活の面で隆司に付き合えないこともあるだろうけど、気にしないで隆司は好きなものを食べてください。Kも頑張って料理します。全然上手じゃないけど、料理の本もいっぱい買ったんだ。Kももっと健康になる努力をします。
少し前に、Kが、一人の方がいい、とか、干渉しないでほしい、とか言ってしまって、隆司に寂しい思いをさせてしまってごめん。それは決して隆司との生活をいやがっている意味じゃないことを誤解しないでいてください。
Kはいつも上機嫌でいるわけでもなく、だれとも話したくないような気分になる時があるから、そういう時は隆司にそういう気分をうつしたくないから、離れていた方がいいと思ったのです。石井先生にたびたび不機嫌をうつされたからね。不機嫌のやり取りは絶たないといけない。少し距離を置くことが必要な場合もあります。
毎日一緒にいるとなると、Kの嫌な面ももっと見えてくると思うけど、直せるところは直すから、はっきり言ってね。私もTに直してほしいとところがあったら、言うからね。
きっとうまくいくと思っています。これからもよろしくお願いします。
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